広告代理店の提案とは~マクロとミクロから考える~

自分は、インターネット広告代理店に勤めている。

 

インターネット広告というものは、字義のとおり、
インターネット上に掲載される広告のことを指す。

 

インターネット広告というのは、いわゆる街中やテレビ・雑誌、電車内に展開される「広告」と若干異なる。

 

何が違うのか?
といえば、それはターゲティングの細やかさと精度だろう。

 

街中やテレビ・雑誌、電車内で見る広告というのは、
広く多くの人たちに向けた広告である。

そこには元々その広告の商品やサービスを知らなかった人たちもいれば、知っている人もおり、好きな人・嫌いな人・興味がない人など、いろんな人がターゲットに含まれることとなる。

そういった人たちに、商品・サービスの魅力・必要性を感じてもらうための手段として、「広告」は活用されている。


対して、「インターネット広告」というと、もちろん上記のような「広告」と同様の方法で活用することも可能だが、さらにユーザーごとに細かい広告アプローチができるのが特徴だ。

たとえば、性別・年齢などのデモグラ、その人がなにに興味をもっているのか?何を必要と感じているのか?などから、「○○に興味関心がある人にだけ広告を掲載したい」などの制限も可能である。

ここでは記さないが、より細かくターゲットユーザーを区分することも可能であり、
そういった手法は、インターネット広告においてはまるっと「アドテクノロジー」と呼称される。

 

「アドテクノロジー」の進化(深化?)に伴い、
広告ができるターゲティングの細やかさは大きく進んでいる一方で、
時に「テクノロジー(ミクロの視点)」で出来ることからマーケティングプロモーションを考えていないか?と思わされることがある。

 

もちろんそういった手段・方法の視点から生み出されるアイデアがあることも事実であり、「こんなターゲティングができるならこんな表現で広告を出してみよう」という意見がでることもしばしばだ。

だが、そちらに傾倒しすぎると、マーケティングの本質を見失ってしまうことも、
また裏表の事実である。


マーケティングの理解は、「市場・顧客の理解」に尽きると私は考える。
もちろん、加えて「競合の理解」「自社の強み」といった「3C」のフレームワークも重要だし、「ファイブフォース分析」「バリューチェーン分析」などの方法もあげられるが、何よりも重要なのは、つまるところ「市場・顧客」だろう。
そこがなくては、我々がマーケティングを考えたり、プロモーションを展開する対象する土台がそもそもなくなるのと同義だからだ。

 

我々広告代理店は、「広告主の課題を最も解決に導けるソリューションを提供できるのはどこか?」といったコンペにしばしば呼ばれ、未来のクライアントとすべく、必死に提案内容を考えることとなる。

だがよく起こるのが、前段の「マクロ分析」と戦術となる「アドテク提案(ミクロ)」がうまくかみ合っていない、ないし最悪の場合、まったく関連のない独立した提案に終始してしまっているケースだ。

 

「アドテク」というのは、端的にいえば「どんな広告主でも適用可能」つまり汎用的な広告手法であるのに対し、広告主がもつ課題というのは、それぞれ個別である。

つまり個別化された課題に対し、汎用的な手法提案が完全にマッチすることはないし、
それを実現しようというのは、率直に「広告代理店では困難」というものだろう。

 

では僕ら広告代理店がすべきことは何か?

 

それはマクロ(外部・内部の課題)とミクロ(アドテク)両方からアプローチした際に、決してかみ合わない部分を、いかに凸凹なく、密接につなげられるかであり、
そこで提案の中心・根幹として介在するのが、「クリエイティブ」だと、私は考える。

広告主ごとに、伝えたいメッセージは異なるし、したい表現手法も変わってくる。
そしてそのメッセージ・表現手法をいかに適切なターゲットユーザーにアプローチすることができるか、需要が顕在化したユーザーだけでなく、潜在的な悩みをもつユーザーにも広告をあてることができるか。

これらが広告マーケティングの本質であり、広告代理店がつくれるコミュニケーションプランであり、それを提案し実現できるのが、「優れた広告代理店」であろうと思う。アドテクに溺れず、かつ市場・顧客の需要に迎合しすぎず、広告主の今と未来課題と正面から向き合いながら解決をしていく。

そしてその理想と現実のギャップをしっかり「クリエイティブの表現・メッセージ」で補完する。

これを実現できるコミュニケーションプランニングを目指していきたいものである。